かみつきねこ

 
 ペルを飼ったのは,前に飼っていた雄のマンチカンが2歳2ヶ月で死んで毎日泣き暮らし,
耐えられなかったから。マンちゃん,マンちゃんとネコの名前を呼んでいた。
ペットショップを巡り歩き,ついに大きなショッピングモールの中にある
ペットショップでものすごく立派な顔の白いネコとめぐりあった。
ほかに10匹くらい売られてたけど,ペルしか興味なかった。
 赤ちゃんのころから売られているのを母親がみかけていた。
手の平に乗りそうな小さな子猫を抱っこさせてもらった。
ネコはにこにこしてまばたきしながら私の顔をじっと見つめてきたのでうれしかった。
それから,覚えていてくれたのかは知らないが店に行くたびにネコはこっちを向いてくれるようになった。
マンチカンはベージュのしまねこで,目は水色だったけど,
色がそっくりで顔が全然似ていない子ネコが売られていた。
母親にすすめられ,抱っこさせてもらった。ところがそのネコは
わたしのほっぺたやまぶたを噛んで肉を引っ張った。
こんなにかむ子は飼いたくないと叫ぶと,さっきからそのベージュ君を
熱心に見ていた黄色いワイシャツのおじいさんがにこにこしていた。
ライバルがいなくなると思ったようだ。
あげく,ベージュ君はケースの戸を閉めようとした店員さんの指に何回も噛みつき,格闘した。
 ペルを買って欲しいと母親に頼んだが.20万円近くて値段が高すぎた。
「ぜんぜんきれいだと思えない。ただの白猫でしょ。それにうちには白いメーンクーン
 がいるから,似たようなの買ってもしょうがないでしょ。」と反対された。
 ペットショップにきた夫婦がペルを見て,かわいいと連呼していた。
奥さんがじっとネコに見入っていたので,旦那さんが
「だめだめ,これはセレブの飼うネコだから」といって引っ張っていってしまった。
結局買ったわたしはセレブとは程遠いのだけれど。
8ヶ月になって11万円に値下がりしたのでついに買ってもらえることになった。
ところがネコがいない!ソマリが売れ残っているだけだった。
がっかりしたがあきらめきれずに探していると,何段もある展示ケースのうち,
一番下のケースをしゃがんで見たら,白い紙くずの中から,緑色の二つの目がわたしをみつめていた。
ネコと同じ色の紙の中に埋もれていたのでわからなかったのだ。
「おかあさん,目がある!目があるよ!」と思わずさけんでしまった。
結局売約してもらえることになり,天にも昇る心地だった。
 ところがペルは店員さん(女の人)に抱っこされながら,手にがぶがぶ噛みついていたのでびっくり。
ネコはちゃかちゃか暴れてじっとできない様子。あげくに机の上にあるチラシを20枚くらい噛んで
ぐちゃぐちゃにして荒らしてしまったり,わたしのハンドバッグにも噛み付いた。
わたしも抱っこしたら手を噛まれた。
 わたしがペルを抱っこしながら「かわいい」と言ったら,
「かわいいんですか!それ!」と店員さんがぎょっとした顔で叫んだ。
おまけにネコをじっとにらんでいた。強暴だからやめたほうがいいと何度もいわれたけど
かわいくてしょうがなく,決意は揺らがなかった。
別の店員さん(男の人)が店員さんが全員ペルに噛まれたことが
あると母親に教えてくれた。凶暴すぎて,シャンプーできず,毛玉だらけになっていた。
一人だけ女の店員さんが扱いがうまくて噛まれたことがなかったという。
弟が見に来てかわいいといってなでたら,やっぱり噛まれた。
「ダリウス」と母親がつけたがったが,弟が「ペル」と決めた。マンチカンの名前も弟がつけた。
いよいよ引き取りに行った日,キャリーバッグが小さすぎてきつそうだったのでびっくりした。
車で運ばれる最中も,もぞもぞと体を動かし,窮屈そうだった。
 さて晴れてうちに来ると,メーンクーンはペルを見た瞬間,にこにこしながらお腹を見せて転がった。
ヤギミルクをもらって飲ませたが,噛み癖は一向に直る気配がなかった。
写真は子猫のころのペル。
続く
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